依頼者は旦那様を亡くされた女性の方です。
お子様はおらず、遺言書も残されていませんでした。
もし遺言書があり「全ての財産は妻で相続させる」旨の内容であれば、全財産は奥様が相続できました。
遺言がない相続の場合、相続人全員で話し合って遺産の分け方を決める「遺産分割協議」が必要となります。
厄介なのは、お子様がいないご夫婦の場合、夫が亡くなると、相続人はその配偶者(妻)のみならず、亡夫の兄弟姉妹も相続人となります。
亡夫は5人兄弟の末っ子で、他の兄弟は1名をのこし既に他界。兄弟が先に他界していた場合はその子供(被相続人からみて甥姪)が代わりに相続人(代襲相続人といいます)となります。甥姪は合わせて7人おり、結果、相続人は依頼者である奥様を含めて合計9人にまで膨れ上がってしまいました。
何から始めてよいか分からず途方に暮れ、当事務所にご依頼がありました。
上記のケースにおいては、まずは相続人全員の所在の確認と戸籍を収集し、正確な相続人数を公的に証明する必要があります。戸籍の収集からスタートしました。
被相続人の出生から死亡までの戸籍はもちろん、兄弟の数も正確に把握する必要があるため、被相続人(亡き夫)の親の代の戸籍まで収集する必要があります。
一部は戦争で滅失しているものもあり、かなり難航しましたが、約半年掛かり全ての戸籍の収集が完了しました。
不動産の他に金融資産もかなりあったため、奥様の意向で、夫の兄弟や甥姪達には法定相続分を渡してもよいとのことでしたので、当事務所において、その旨を盛り込んだ「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員へ発送し、全ての方から署名押印を頂くことが出来ました。
遺産分割協議はひとりでも異論がある場合、成立せず、そのまま調停や裁判に移行するケースもあるのですが、今回は無事うまくいきました。
その後は不動産の登記(奥様が無事相続できました)、預貯金の解約払戻、各相続人への分配を行い無事完了です。
相続人の数が多いうえに代襲相続も絡み、通常よりは長い期間がかかりましたが、無事完了し、依頼者様には本当に喜んでいただけました。
【事務所から一言】
今回のようにお子様がいない夫婦で、配偶者が亡くなり遺言書がのこされていない場合、その兄弟姉妹にも財産を請求する権利(4分の1)が発生します。また、兄弟が多い場合、戸籍を収集するのもかなりの労力を要します。
このようなケースではおひとりで悩まずに、是非お近くの相続の専門家に依頼されることをお勧めいたします。